四泊五日の旅行に持っていくレンズ——本数と画角の考え方

旅と機材
旅行; レンズ; 画角; 機材選び; コンパクトカメラ; iPhone; フルサイズ; マイクロフォーサーズ
2017 文字

荷物を詰めるとき、レンズを何本入れるかで少し迷う。

三本持っていけば、どんな場面にも対応できる気がする。広角、標準、中望遠。でも実際に旅に出てみると、街を歩きながらバッグを開けてレンズを交換する場面は、一日にほとんどない。交換を考えるたびに少し止まり、袋から出して、付け替えて、キャップをしまう。それだけで気が散る。

旅先での写真は、機材の充実度より、カメラを手に持っている時間の長さで決まる。

レンズは一本か二本か

四泊五日の旅なら、一本か二本で十分だ。三本以上は、よほど明確な目的(建築、ポートレート、風景を分けて撮る、など)がある場合を除いて、持ちすぎになる。

一本にするなら、標準域の単焦点がいちばん使いやすい。35mm 換算で 35mm から 50mm のあいだ。料理も路地も人物もどこかで使い道がある画角で、なんでも撮れるという意味ではなく、どんな場面でも撮る方針を持てる、という意味だ。

二本にするなら、広角と中望遠の組み合わせ。35mm 換算で 28〜35mm と 85〜90mm が扱いやすい。広角は街の記録や室内、望遠は人物や圧縮した風景を撮るとき使う。ただ、二本になった瞬間、「どちらを使うか」という判断が常について回る。それが楽しいと感じるなら二本でよいが、面倒に感じるなら一本のほうが旅は軽い。

ズームレンズを使うなら、一本で広角から中望遠をカバーするものがいい。多少の画質は我慢して、交換の手間をなくすほうを選ぶ判断だ。ズームは焦点距離を迷いやすいので、撮る前に大まかな焦点距離を決めておくと、シャッターを切るまでが速くなる。

フルサイズの場合

フルサイズシステムは、センサー性能では圧倒的だが、旅での重量は正直に体に来る。ボディ本体が 700〜900g 前後あり、そこに標準レンズを付けると 1kg を超えることも多い。

一本で旅をするなら、35mm f/2 か 50mm f/1.8 クラスの軽量単焦点がよい。どちらも 250〜350g 程度で、ボディと合わせても 1kg 強に収まる。これが長時間の街歩きでぎりぎり首と肩に許容できる重さだ。

二本にするなら、28mm と 85mm の組み合わせか、35mm と 85mm の組み合わせが扱いやすい。フルサイズの 85mm は圧縮と背景のぼけが素直で、旅先のポートレートや市場の質感を切り取るのに向いている。

コンパクトさを優先するなら、28mm f/2.8 クラスのパンケーキ型を選ぶ手もある。ソニーやニコンのミラーレスシステムには薄型の広角がいくつかあり、街中での持ち歩きの感覚がだいぶ変わる。

フルサイズを旅に持っていくと決めた時点で、「撮影のための旅」という意識が少し強くなる。それを楽しみと感じるか、負荷と感じるかは人によって違う。荷物の重さは、写真への姿勢の重さとほぼ連動する。

マイクロフォーサーズの場合

マイクロフォーサーズは、旅の機材として使い勝手がいい。センサーサイズが小さい分だけボディもレンズも小さくなり、このシステムで旅をしていると、持ち歩いていることを忘れやすい。

センサーサイズの関係で、フルサイズの 2 倍の焦点距離と同等になる。17mm がフルサイズ換算 34mm 相当、25mm が 50mm 相当、45mm が 90mm 相当だ。

一本なら、17mm f/1.8(換算 34mm)か 25mm f/1.8(換算 50mm)が使いやすい。どちらも 150〜180g 前後で、ボディ込みでも 600〜700g に収まる。一日中首にかけていても、重さがあまり気にならない。

二本にしても、フルサイズの一本分の重さに収まる。17mm と 45mm の組み合わせなら合計 350g 程度で、ジャケットのポケットに一本入れておくことも難しくない。

ただ、高感度での粒子感と、背景のぼけの出方はフルサイズとは違う。暗い場所でのシャープさや、開放で大きくぼかした写真を重視するなら、その点は割り引いて考える必要がある。旅先の明るい屋外では、この差がほとんど気にならない。

サブとしてのコンパクトカメラ

メインのカメラをバッグに入れていると、どうしても撮り逃す瞬間がある。

飲食店の席に座ったとき、路上でふと目に入ったもの、バスの窓から見えた光景。そういう場面でバッグからカメラを取り出してレンズを付けていると、その間に何かが終わってしまう。

コンパクトカメラはポケットかストラップに入れておく道具で、メインカメラの補完ではない。別の時間軸で動く道具だと思うと、使い分けが自然になる。

画角は、メインと意図的にずらすのがよい。メインが 50mm 換算なら、コンパクトは 28mm 換算にする。同じ画角が二つあっても、コンパクトを出す動機が薄れる。

固定焦点のものが向いている。ズームがあると、またも焦点距離を迷うことになる。リコー GR シリーズの 28mm 固定、富士フイルム X100 系の 35mm 固定は、取り出したらすぐ撮れる。

コンパクトをサブとして持つなら、重量の増加は正直に計算しておく。フルサイズのメイン+コンパクトは合計で 1.5kg を超えることもある。マイクロフォーサーズのメイン+コンパクトなら、1kg 前後に収まることが多い。この差は、五日間の旅では体感としてかなり違う。

iPhone は常にそこにある

旅に iPhone を持っていかない人は、もうほとんどいない。

ポケットに入っていて、いつでも取り出せる。広角(約 24mm 換算)、標準(約 48mm 換算)、望遠(機種によって異なる)が選べる。

iPhone は記録の道具で、専用カメラは意図の道具だ。この二つはそもそも撮る動作と結果の質感が違う。

ただ、「ポケットから出してすぐ撮る」という役割は、iPhone がすでに担っている。コンパクトを持つ理由があるとすれば、iPhone では出せない何かがある場合だ。光学的な深さ、感光の質、操作の手触り——そのどれかを求めているなら、持っていく意味がある。

コンパクトと iPhone で写真の差が出ないと感じるなら、その旅ではコンパクトは要らない。

まとめ:本数と画角の組み合わせ

システムレンズ構成(換算)重量目安
フルサイズ・一本35mm または 50mm1.0〜1.2kg
フルサイズ・二本28mm + 85mm1.3〜1.6kg
マイクロフォーサーズ・一本34mm または 50mm 相当0.6〜0.7kg
マイクロフォーサーズ・二本34mm + 90mm 相当0.8〜1.0kg
+コンパクトカメラ28mm 固定など+200〜350g
+iPhone常時携帯—

数字は目安で、機材の組み合わせによって大きく変わる。

旅が終わって「もう一本あればよかった」と後悔するより、「持っていったものをよく使えた」のほうがいい。持てる限界ではなく、快適に持ち続けられる重さを基準にする。それが写真の枚数に、直接つながる。

出発の前日にもう一度バッグを開けて、一本だけ取り出してみる。それでも旅が成立するなら、その一本は要らなかったかもしれない。