写ルンですに、約20年ぶりの選択肢が生まれた——Active と Black and White の発表によせて

写ルンです; 富士フイルム; レンズ付きフィルム; 防水カメラ; モノクロフィルム; フィルムカメラ
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写ルンですが発表を出した。

それだけで、少し立ち止まった人は多いと思う。2026年7月1日、富士フイルムは「写ルンです Active™」と「写ルンです Black and White™」の2製品を発表した。どちらも従来と同じ使い捨て型のレンズ付きフィルムカメラで、写ルンですシリーズの新しいバリエーションだ。

前提

筆者はこれらの製品をまだ使用していない。2026年7月時点では未発売で、Active が8月上旬、Black and White が9月以降の発売予定となっている。価格はいずれもオープンで未発表だ。

以下は、富士フイルムの写ルンです公式サイトおよび各製品ページ、写ルンですの歩みページ、ITmedia PC USER の発表記事をもとにした整理である。

40周年に動いたバリエーション展開

写ルンですの初代が発売されたのは1986年。2026年は誕生から40周年にあたる。

公式のヒストリーページをたどると、1990年代から2000年代初頭にかけて防水タイプ、パノラマ、高感度、望遠、スリムなど多様なバリエーションが展開されていたことがわかる。しかし2007年の防水モデル「写ルンですNEW Waterproof 27」を最後に新しい種類の製品は途絶え、2018年と2025年には標準モデルが再設計されたものの、新バリエーションは出なかった。

今回の発表は、その2007年以来、約19年ぶりとなる新しい種類の製品追加にあたる。なぜこのタイミングに、防水とモノクロという二つの選択肢なのか、公式は明示していない。ただ、どちらも「標準の写ルンですでは対応できない場面」に明確に向けた選択肢であることは伝わってくる。

写ルンです Active——水の中でも、グローブをしたままでも

Active の核心は水深10mまでの防水性能だ。

プラスチックで覆われたボディで防水し、雨、雪、キャンプ、海中といったシーンでの使用を前提に設計されている。大型巻き上げノブとレバー式シャッターは、水中での操作やグローブを着用した状態でも扱えるよう配慮されており、ストラップも付属する。

過去の写ルンです防水モデルを振り返ると、1991年の初代は水深3m対応、2000年と2007年のモデルも同様に防水仕様だった。今回の10mというスペックは、ダイビングの浅瀬エリアまでカバーできる水深で、これまでより使える場面の幅は広い。

ただし、未発売の段階でできることは限られている。搭載フィルムの感度、実際の防水密閉の信頼性、水中での写り——これらは実際に使って確かめるしかない。

Active で撮るコツ

実際に使った経験はないが、防水カメラ全般の知見と公式情報から整理しておく。

水中では被写体に近づく。水は光を吸収するため、撮影距離が長くなるほど発色と解像感が落ちやすい。写ルンですのフラッシュ到達距離は標準モデルと同じく3m前後と考えられる。水中では1〜2mほどまで寄ることで、フラッシュ光が有効に届く可能性が高まる。また、水深が増すほど赤が失われ青みが強くなる傾向があるため、カラーフィルムでは被写体への接近が色を保つ上で重要になる。

陸上の雨天こそ、このカメラが最も自由になれる場面だ。濡れた路面の反射、水滴がついた葉や窓、霧雨の柔らかな光——通常のカメラでは気を遣う状況でも、Active ならカメラを守ることを考えずにシャッターを切れる。「天気が悪い日こそ持ち出す一台」と位置づけると、使い道が整理しやすい。

使用前に外観を確認する。防水性能はシール部分の状態に依存する。新品であれば問題は少ないが、何かが挟まっていないかを入手後に一度見ておく習慣はつけたい。

大型ノブとレバーシャッターは、寒冷地でも生きる。冬の雪山など、手袋を外さずに操作したい場面では、標準の写ルンですより明確に扱いやすいはずだ。水辺以外の使い道として、覚えておいて損はない。

写ルンです Black and White——カラーラボで現像できるモノクロフィルム

Black and White には、注目すべき実用的な特徴がある。

公式サイトには「フィルムはカラー現像に対応し、黒白フィルム専用の現像処理が不要」とある。これは重要な情報だ。

一般的なモノクロフィルム(Kodak TRI-X や Ilford HP5+ など)は、C-41カラーネガ現像ではなく専用のモノクロ現像(D-76など)を必要とする。モノクロ現像に対応していないラボは多く、対応店を探す手間が初心者にとってのハードルになることがある。

一方、C-41対応のモノクロフィルムは「クロモジェニックフィルム」と呼ばれ、Ilford XP2 Super が現在入手できる代表格だ。写ルンです Black and White がこの種のフィルムを搭載していると仮定するなら、一般的なカラーラボで現像を頼めることになる。「モノクロの質感を試してみたいが、現像の手間が心配」という人には、見逃しにくい利点だ。

ただし、搭載フィルムの品番は現時点で公式から明示されていない。公式サイトの説明「シャープな描写と滑らかな粒状感」は写りの方向性を示しているが、実際の粒状感や階調の傾向は、作例が出てきてから判断したい。

モノクロ写真の表現について

モノクロで撮ることは、単に色を抜くことではない。

カラー写真では、赤や暖色が自然に視線を引き寄せる。鮮やかな看板、赤いジャケット、花——それらは画面の中で自動的に「読む順序」を作る。モノクロにすると、その誘導が消える。代わりに、形(シルエットや輪郭)、質感(肌、石、水、布の表面)、光と影の対比が画面を動かすようになる。

言い方を変えると、モノクロ写真は光と影でものを描く写真だ。同じ被写体を撮っても、光の当たり方が変わると絵が変わる。カラーでは色が情報を補完してくれるが、モノクロにはその補完がない。光の方向、硬さ、強さが、直接絵の質に出る。

このことは、失敗が増えることを意味するかもしれない。が、同時に、曇り空の均一な光が肌の質感を丁寧に記録し、晴天の路地の影が形として機能し、窓から差す一筋の光が空間を整理する——という経験もある。カラーでは「ありふれた場面」に見えたものが、モノクロで撮ることで見え方が変わることがある。

クロモジェニックフィルム(C-41対応のモノクロフィルム)は、従来のモノクロフィルムとは粒状感の性質が少し違う。ハロゲン化銀の粒子ではなく色素雲で画像を形成するため、粒子が細かく、階調がなめらかになりやすい傾向がある。Ilford XP2 Super に代表されるこの種のフィルムは、明るい条件では粒状感をほとんど感じさせず、高感度域に近づくと初めて粒子感が現れる特性を持つ。写ルンです Black and White がこの傾向に当てはまるかは搭載フィルムが明らかになってから確かめるべきことだが、「シャープな描写と滑らかな粒状感」という公式の言葉はそれと矛盾しない。

Black and White で撮るコツ

目を細めてから撮る。シャッターを切る前に、一度目を細めて被写体を見てみるといい。色の情報が薄れて、明暗の対比だけが残る。その状態で「絵になりそうか」を判断する習慣が、モノクロらしい写真につながりやすい。

光の方向を意識する。正面から均一に照らされた被写体は、モノクロではのっぺりして見えることがある。斜めや後ろから光が当たっていると、陰影が生まれ、形が立体的に見えやすくなる。街中では、建物の隙間から差し込む光や、窓光のある室内が狙い目だ。

晴天の影を形として使う。直射日光が作る硬い影は、モノクロでは「もうひとつの被写体」として機能する。階段の影、格子の影、人の影——それ自体を画面の構成要素として取り込む意識が、モノクロの強みを引き出す。

質感のある被写体に近づく。コンクリート、石畳、木の幹、水面の細かな波——これらは色があるときより、トーンとして見たほうが情報が豊かに見えることがある。写ルンですは焦点距離が固定で、あまり遠い被写体は写りが弱くなる。近寄って質感を捉えるほうが、このカメラの特性に合っていると思う。

フラッシュの直射光は、積極的に使う場面がある。写ルンですのフラッシュは正面からの直射になる。カラーでは平板に見えることもあるこの光も、モノクロでは肌のハイライトと陰影がはっきり出て、スナップポートレートとして成立することがある。夜間や薄暗い室内では、迷わずフラッシュを使っていい。

27枚という制限を活かす。無制限に撮れるスマートフォンの対極として、1枚を切る前に少し立ち止まることができる。モノクロ写真は「選ぶ眼」を育てる過程に価値がある。制限はその機会でもある。

どんな人に向きそうか

以下は公式情報からの推測であり、実写に基づく評価ではない。

Active が向きそうな人

  • 海や川、雨天の屋外で、壊れても惜しくないカメラを持ち込みたい人
  • ダイビングや水辺のアクティビティに気軽なフィルムカメラを一本持っていきたい人
  • 水濡れを気にせず、天候や状況に振り回されたくない撮影をしたい人

Black and White が向きそうな人

  • モノクロ写真を試したいが、専用現像ラボを探す手間を避けたい人
  • 写ルンですの手軽さのまま、色を抜いた画面で日常を見直してみたい人
  • 初めてモノクロフィルムを使う入口として、低リスクで試したい人

どちらも向かない人

  • フィルムの種類、感度、現像条件を細かく選んで撮りたい人
  • 同じカメラで何度も撮り続けたい人(どちらも使い捨てのため)
  • フィルム代と現像代のコストを抑えたい人(1本27枚、価格未定)

発売後に確認したいこと

まだわからないことが多い。発売後に確かめたい点を残しておく。

  1. 搭載フィルムの品番と感度(特に Black and White)
  2. Active の防水密閉は長期使用や気温変化に対してどこまで信頼できるか
  3. 価格は標準モデルに対してどの程度の差になるか
  4. 写ルンです+アプリ(コンビニ経由のデジタルデータ受け取り)に対応するか
  5. Black and White の実際の粒状感と階調の傾向

写ルンですが動いたことは、単純に面白い。20年ぶりに選択肢が増えた事実は、フィルムカメラへの関心が特定の層にとどまらず続いていることを示している気がする。どんな写真が生まれるかは、手に取ってみてからのことだ。

出典