遠景を撮るときのF値——昼景と夜景で同じにしない

写真の見方
写真; 絞り; F値; 風景; 夜景; 撮影技術; 初心者
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遠景を撮るとき、つい「とりあえず絞る」と考えがちだ。

もちろん間違いではない。遠くまでしっかり見せたいなら、ある程度は絞ったほうが安心できる。ただ、そこで毎回 F16 や F22 にしてしまうと、昼は必要以上にシャッターが遅くなり、夜はさらに条件が厳しくなる。絞れば何でも解決するわけではない。

この記事で言いたいことはひとつだけだ。遠景の F 値は、昼なら F8〜F11 を起点に、夜なら三脚の有無と光をどう見せたいかで決めると考えやすい。

以下は、ニコン、パナソニック、タムロンの公開資料をもとにした一般的な整理である。センサーサイズ、焦点距離、画面内の前景の近さによって適正値は動くので、最終的には手元の機材で微調整したい。

まず F 値で変わることを短く整理する

ニコンやパナソニックの解説では、F 値を小さくすると光が多く入り、被写界深度は浅くなる。反対に、F 値を大きくすると光は減るが、ピントが合って見える範囲は広がる。

ここで大事なのは、遠景だからといって無条件に最大まで絞る必要はないことだ。山並みや街並みのように、そもそも被写体がかなり遠いなら、F8 前後でも十分に整うことは多い。逆に、手前の柵や草や窓枠も一緒に見せたいなら、もう少し絞りたくなる。

遠景で見るべきなのは、「遠くがある」ことより、どこからどこまでを同時にはっきり見せたいかだと思う。

昼の遠景は F8〜F11 から始める

タムロンの公開記事では、風景写真では F8〜F11 程度がよく使われると案内されている。これはかなり素直な出発点だと思う。

昼の遠景では、光量に余裕がある。だから少し絞っても困りにくい。その一方で、必要以上に絞りすぎる理由も少ない。F8〜F11 あたりは、被写界深度と解像感のバランスを取りやすく、初心者でも失敗しにくい。

たとえば、こんなふうに考えると分かりやすい。

場面まず試したい F 値見るポイント
山並み、海、街並みを素直に撮るF8画面全体が十分に落ち着くか
手前の木や柵も少し入るF11前景が薄くならずに残るか
手前すぐの草花までしっかり入れたいF11〜F16シャッター速度低下と解像感の低下が許せるか

ここで重要なのは、遠景だけなら F16 が常に必要なわけではないことだ。手前に近い要素がないなら、F8 や F5.6 のほうが、シャッター速度に余裕が出て、結果としてぶれずに整う場合も多い。

F16 を常用しないほうがよい理由

タムロンの解説では、風景で F 値を大きくしすぎると、光の回折によって解像度が落ちる場合があり、目安として F16 より大きいと細部がぼやけやすいとされている。

つまり、小さく絞れば絞るほどよいわけではない。絞りすぎると、今度は別の理由でシャープさが削られる。

しかも昼でも、F16 や F22 にするとシャッター速度は遅くなりやすい。風がある日、望遠気味、手持ち撮影。この条件が重なると、せっかく深くした被写界深度より先に、手ブレや被写体ブレで甘くなることがある。

だから遠景では、「深ければ安心」ではなく、必要な深さで止めるという考え方のほうが実用的だ。

夜景は三脚の有無で考え方が変わる

夜景では、昼の考え方をそのまま持ち込むと迷いやすい。

遠くの街明かりを見ていると、昼と同じように全部くっきり写したくなる。けれど、夜は光が足りない。絞れば絞るほど、シャッター速度か ISO 感度にしわ寄せが来る。だから、夜景では三脚があるかどうかで話がかなり変わる。

三脚がある夜景

タムロンの公開記事では、夜景でも F8〜F11 程度が一般的な設定として案内されている。三脚を使えるなら、この考え方はかなり素直に使いやすい。

まずは F8 前後から始める。画面全体の解像感と、街の点光源の見え方のバランスがよいことが多い。光条を少し強めたいなら F11 へ寄せる。さらに強い光条を明確に出したいなら F16 まで絞ることもあるが、そのぶん回折と長時間露光は増える。

要するに、三脚ありの夜景は「絞ってもよい」のではなく、どこまで絞る意味があるかを選べる状態だ。必要以上に深くするより、光の形をどう見せたいかで決めたほうが後悔しにくい。

手持ちの夜景

手持ちでは話が変わる。

遠景だからといって、手持ちで F11 にすると、すぐにシャッター速度が苦しくなる。そこで無理に ISO を上げればノイズが増え、速度を落とせば手ブレが増える。手持ちの夜景では、遠景であっても開放寄りから考えたほうが現実的だ。

たとえば F2、F2.8、F4 までの範囲で、まず安全なシャッター速度を確保する。そのうえで、画面全体の見え方を見て、もう少し絞れるなら絞る。遠景はもともと被写体との距離があるので、手前の近い物を入れていなければ、開放寄りでも破綻しないことは多い。

夜景の手持ちで大事なのは、「遠景を全部止めるために絞る」ことより、写真そのものをぶらさずに持ち帰ることだと思う。

遠景でも、夜景でも、まずは何を残したいかを見る

昼も夜も、結局はここへ戻る。

遠景の F 値は、景色の距離だけで決めるものではない。画面の手前をどこまで残したいか。光条を欲しいのか。手持ちなのか、三脚なのか。そこが変われば、同じ街並みでも答えは変わる。

私は次のように考えると迷いが減ると思う。

  1. まず三脚の有無を決める。
  2. 次に、手前の近い要素をどこまで入れるかを見る。
  3. そのあとで、昼なら F8〜F11、夜の三脚なら F8 前後、夜の手持ちなら開放寄りを起点にする。
  4. 最後に、光条が欲しいかどうかで、絞る方向へ動く。

順番が逆になると、「遠景だから絞る」「夜景だからもっと絞る」となりやすい。そうすると、必要以上に条件を厳しくしてしまう。

判断

遠景の F 値は、昼でも夜でも「大きいほうが正しい」とは限らない。

昼なら、まず F8〜F11 で十分なことが多い。夜なら、三脚があるかどうかで考え方を切り替えたほうがよい。三脚ありなら F8〜F11 は素直な出発点になるし、手持ちなら開放寄りから安全なシャッター速度を守るほうが大事になる。

遠景で迷ったときは、F 値をひとつの正解として覚えるより、必要な深さと、失いたくないシャッター速度の釣り合いを見る。その感覚がつくと、昼景も夜景もかなり楽になる。

確認リスト

  1. 遠景だけでなく、手前の近い要素をどこまで入れたいか見たか。
  2. 昼は F8〜F11 から始めて十分かを確認したか。
  3. F16 以上にする理由が本当にあるか考えたか。
  4. 夜景では、三脚の有無で考え方を切り替えたか。
  5. 手持ちの夜景で、絞りすぎてシャッター速度を失っていないか。

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