マニュアルフォーカスレンズでピンボケ写真を減らす——合っている一枚を増やす
マニュアルフォーカスレンズを使うと、写真は少し遅くなる。
ピントを自分で探すぶん、「たぶんここだろう」と思ってからシャッターを切るまでに、細かい迷いがいくつも入る。どこに置くか。少し絞るか。そのまま構図を動かすか。被写体はまだそこにいるか。ピンボケは、たいていその途中で起きる。
この記事で言いたいことはひとつだけだ。マニュアルフォーカスでピンボケ写真を減らしたいなら、リングを上手に回すことより先に、どこに置くか、距離をどう見るか、どこまで深さを取るかを決めたほうがいい。
以下は、筆者の撮影メモと、富士フイルム、ソニー、キヤノン、ニコンのマニュアルフォーカス関連の公開情報をもとにした整理である。ピーキングや拡大表示の挙動は機種差があるので、最後は手元のカメラで確かめたい。
まず「ピンボケ」の中身を分ける
ピンボケ写真は、一種類ではない。
少なくとも、次の四つは分けて見たほうがよい。
- 手前に合いすぎた前ピン。
- 奥へ抜けた後ピン。
- 合わせたあとに構図を動かして外した。
- 被写界深度が浅すぎて、合っている範囲が足りなかった。
失敗を全部まとめて「ピンボケ」と呼ぶと、次にどこを直せばいいかが見えにくい。まずは、自分がどの型で外しているのかを見るところから始めたほうが早い。
どこにピントを置くかを、一点で先に決める
マニュアルフォーカスで外しやすい人は、たいてい「主役の近く」に合わせている。
目ならまつげか瞳。看板なら文字の縁。器なら手前の縁。どこがいちばん見えてほしいのかを、一点で決める。その一点が曖昧なままリングを回すと、たいてい甘くなる。
とくに人物では、「顔に合っていれば十分」と考えると危ない。近距離や開放付近では、目と耳ではもう別の面だ。先に目へ決める。それだけで外しにくくなる。
距離を見てからリングを回す
富士フイルムの公開マニュアルでは、マニュアルフォーカス時に距離指標の白い線でピントの中心、青いバーで被写界深度を確認できると案内されている。ここはかなり効く。
リングを無限遠から探り始めるより、「これは 1m くらい」「これは通りの向こうだから 5m はある」と先に距離を見たほうが速い。見当がついていると、最初の位置を外しにくい。
距離指標のあるレンズなら、なお分かりやすい。見積もった距離と、レンズに出ている距離を照らし合わせる。ここでズレる癖が見えてくると、次から外しにくくなる。
迷ったら、少し絞る
ニコンの解説では、F 値を大きくするほどピントが合って見える範囲、つまり被写界深度は深くなると説明されている。これはマニュアルフォーカスの失敗を減らすとき、そのまま使える。
開放は気持ちがいい。けれど、毎回そこに留まる必要はない。F1.4 や F2 では、合っている範囲が薄すぎて、少しの前後で外れることがある。とくに近距離では、その差が大きい。
歩留まりを上げたいなら、まず一段か二段だけ絞るのが現実的だと思う。F2 なら F2.8 か F4。F2.8 なら F4 か F5.6。そのくらいでも背景の整理はまだ残るし、失敗はぐっと減る。
これは「ぼけを捨てろ」という話ではない。開放でしか出ない写真が必要なのか、まず一枚きちんと合っている写真が必要なのかを切り分けるだけだ。
ピーキングは粗合わせ、拡大表示は追い込み
ソニーはピント拡大を、遠い被写体や細かい被写体、被写界深度の浅い撮影に勧めている。キヤノンも、AF で難しいときは映像を拡大表示して手動で合わせる手順を案内している。変に意地を張らず、そのくらい素直でいいのだと思う。
ピーキングは便利だが、万能ではない。輪郭が光っていても、本当に欲しい一点にぴたりと来ているかは別の話だ。だから、役割を分けたほうがいい。
- ピーキングで大まかに山をつかむ。
- 厳密に合わせたい一枚では拡大表示へ切り替える。
- 拡大したまま最後の微調整をする。
花、物撮り、夜景の点光源、人物の目。こういう場面では、拡大表示を面倒がらないほうが歩留まりは上がる。急ぐときほど粗くなりやすいので、急げない場面ではちゃんと拡大したい。
合わせたあと、大きく構図を振らない
せっかく合ったのに、最後に外す原因がこれだ。
ピントを合わせたあとで、主役を端へ寄せたくなってカメラを大きく振る。すると、近距離や開放付近ではピント面も少しずれる。中心で合わせて端へ構図を振る昔ながらのやり方は、浅い被写界深度では思っているより危うい。
だから、構図を大きく変えたいなら、変えたあとでもう一度だけ見る。近い被写体ほど、このひと手間は効く。
動く被写体は、追うより待つ
マニュアルフォーカスで歩いてくる人を追い続けると、外す要素が増える。距離は変わるし、構図も変わるし、こちらも焦る。
そういうときは、置きピンのほうが素直に当たる。あらかじめ通ってほしい位置へ合わせておく。そこへ被写体が来るのを待つ。ピント合わせの仕事を、シャッターの前に済ませておくわけだ。
遠い被写体やスナップでも、距離指標があるとかなり楽になる。だいたいの距離を決め、必要なら少し絞り、あとは入ってくる瞬間を待つ。このやり方は速さより、失敗の少なさに効く。
外した写真を、前ピンか後ピンかで見る
外した写真は、消す前に少しだけ見る価値がある。
手前に来ているなら、近くを見積もりすぎているのかもしれない。奥へ抜けているなら、最後に構図を動かしたか、距離を甘く読んだのかもしれない。毎回どちらへ外すかが分かると、自分の癖が見えてくる。
ニコンのファインダー撮影時のフォーカスエイドや、富士フイルムの距離指標の考え方も、結局はこの確認に近い。いまどこへ合っているかを、毎回うっすらでも把握する。その積み重ねで、次の一枚は変わってくる。
マニュアルフォーカスでピンボケを減らす短い順番
迷ったら、この順番だけでもだいぶ変わる。
- どこにピントを置くかを一点で決める。
- 被写体までの距離をざっくり見積もる。
- 迷ったら一段か二段だけ絞る。
- ピーキングで粗合わせし、必要なら拡大表示で追い込む。
- 合わせたあとに大きく構図を振らない。
- 動く被写体は追うより待つ。
- 外した写真を前ピンか後ピンかで見る。
ピンボケを減らすのは、根性より順番だと思う。
判断
マニュアルフォーカスレンズで合っている一枚を増やしたいなら、効くのは「回す技術」だけを磨くことではない。
どこに合わせるかを先に決める。距離を見てから回す。必要なら少し絞る。ピーキングと拡大表示を使い分ける。合わせたあとに大きく構図を崩さない。動くものは待つ。そこまで整理すると、マニュアルフォーカスは当たり外れの大きい撮り方ではなくなる。
反対に、毎回開放で、毎回ざっくり合わせて、毎回最後に構図を大きく動かすと、ピンボケは減りにくい。マニュアルフォーカスは不便な遊びではなく、外し方を見分けるほど素直に応えてくれる撮り方だと思う。
確認リスト
- 主役のどこにピントを置くか、一点で決めたか。
- 被写体までの距離を見てからリングを回したか。
- 開放に固執せず、少し絞る選択肢を見たか。
- ピーキングだけで済ませず、必要なら拡大表示したか。
- 合わせたあとに大きく構図を振っていないか。
- 外した理由を前ピンか後ピンかで見返したか。